大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1262号 判決 1948年12月18日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人岡本共次郎の上告趣意について

原判決は、本件恐喝は、第一、第二事実共に、寺地次男を介して被告人が、被害者から、金員の交付を受けた事実を認定しているが、もとより、被告人が直接被害者から、財物の交付を受けようと、第三者を介してこれを受けようと、恐喝罪の成否に影響するところはない。また、第一事実について、原判決の認定するところは、被告人は寺地次男から原判示のような話を聞くや、これを奇貨として、恐喝をすることを決意したというに過ぎない。寺地が脅迫行爲自體に、關與していないことは、原判文上、明らかである。第二事実について、原判決の認定するところは、被告人は寺地を介して脅迫したというのであるが、これは、被告人が寺地と共謀の上、寺地をして脅迫行爲の実行に當らしめたという意味であることは、原判決の事実摘示の項と、證據説明の項とを對照してみればよくわかるのである。もともと、本件は被告人に對する恐喝の事実が起訴されたのであって、寺地に對する公訴は提起されていないのであるから、原判決が、同人は被告人の共犯者として、いかなる罪責を負うかをあきらかにしていないのは當然である。また、被告人が恐喝行爲をするに當って、他に共犯關係に立つものがあったとしても、被告人の犯罪行爲を判示するには、被告人自身の「罪トナルヘキ事実」を明らかにすればよいのであって、原判示は、その點において缺くるところのないことは、前段説明によって明瞭である。從って、原判決には、所論のような理由不備の違法はなく、論旨は理由がない。

よって、刑事訴訟法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

右は、全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例